日本に本社を持ち、楽器・バイク等で超有名なあのYAMAHAがリリースしている無料音楽アプリ『Chord Tracker』の紹介記事です。
当記事ではアプリの概要や機能について簡単に取り上げた後、
コード進行解析の精度、つまり "正確なコードが表示されているのか?" という点に触れていきます。
『Chord Tracker』について
iPhone・iPadに入っている楽曲のコード進行を解析してくれる無料アプリです。
ギター指板を表示させたり、ピアノ鍵盤を表示させることも可能となっていて、コードや鍵盤の位置を覚えられていない方でも楽器練習のお供として利用できます。

画像はiPhoneのものですが、iPadだともっと見やすいレイアウトになるそうです。
ギター指板表示の場合はカポタスト(Capo)の位置を自分で指定することも可能です。
画面右下「再生設定」ボタンからテンポ変更・キーの変更(トランスポーズ)・メロディーキャンセル機能のオンオフを設定することができます。
メロディーキャンセル機能を使う際はイヤホン・ヘッドホンの装着をお勧めします。
iPhone内蔵スピーカーからだと全然キャンセルされませんでした。

もし解析が間違っていた場合、表示されているコードをタップすると自分で訂正することが可能です。
なお、コードは1小節ごとに設定されるため、シンコペーションでコードが変わる場合は次の小節の頭にコードが表示されます。
コード進行解析の精度について
コードを読み取ってくれる凄いアプリと言ったって、どの程度の正確さなのかを把握しておかないと扱い辛いと思います。
そこで、コード解析機能の精度を検証してみました。
検証内容・検証結果についてこれから触れていきます。
コードを童謡で検証
中山晋平さん作曲の童謡『シャボン玉』を用いて検証してみたいと思います。
「メロディは同じだけどコード・アレンジが違う場合」に正しく解析出来るのかという検証です。
①簡単でシンプルなアレンジ
・ベースは常にルート音を弾く。
・単純なコード進行。3コードを軸に1ヶ所だけ違うコードを。
動画左側はChord Trackerが自動解析してくれた結果です。右側は本来こういう表記になるべき <答え> を自分で書いたものです。背景が青色のコードは「完全に間違って解析されてしまっていたコード」を、背景が黄土色のコードは「おしい解析だったコード」を示しています。
ほぼほぼ完璧ですね。今回のアレンジのように簡単なコード進行、それでもって構成音からあまり外れないメロディラインの場合、高い精度で解析できるようです。
12小節2拍目の分数コードの部分だけ間違っていますが、14小節のように「余韻だけが残っている状態(小さい音量)」でも反応することがあるという事を踏まえると、コードチェンジが早かったためにGonCとなったのでしょうね。
つまり、『小さい音でも反応できる』『早いコードチェンジには追いつけない事がある』という事です。
②メロディは同じだけどコード・アレンジが違う場合
・借用和音やディミニッシュコードを使ってみる。
・バイオリンなどの裏メロディを追加。
①のアレンジに比べて精度がかなり下がってしまいました。8小節の解析が大きくずれているので、やはり早いコードチェンジは不得手なのでしょう。
四和音以上の構成音の場合は精度が低くなる印象です。
ルート音と短三度の音は比較的よく解析できています。
12小節1拍目がDm7というように間違えて表記されてしまったのは少しダメージが大きいですね。今回はたまたまハ長調の楽曲ですが、三度の音を間違えてしまったのはマズイです。
F♯の音はちゃんと入っているのですが…
シンセ楽曲でベース音「ある・なし」の検証
解析結果に偏りがあるといけないので、今度はシンセサイザーとSEで構成されたインスト楽曲で検証したいと思います。
①ベース音を入れて検証
まず根本的な問題ですが、小節のカウントがズレていますね。
一番最初に鳴っている水のような音が1小節目の頭として解析されてしまっていますが、あの音は4拍目の裏で鳴らしてあります。
その影響を受けてしまったせいなのか、1・5・9・13小節の3拍目は本来同じコードの筈なのに、解析では9小節目だけF♯onA♯となっています。(本当は全てF♯onC♯にならないといけない。が、A♯はC♯の次に鳴る音であり、しっかりと解析出来ているため、小節のカウントさえ合っていれば、しっかりと解析出来ていたと思う。)
その他コードの解析についてですが、今回は結構合っています。
先ほどのシャボン玉に比べると、音色の数がかなり増えていたのですが……
メロディに釣られてしまうことは少ないのでしょうね。
②ベース音を抜いて、コードを展開形にして検証
これまでの検証で「ベース音の解析精度は比較的高い」ということが分かりました。
なので、そのベース音がない場合でもしっかりと最低音を検出できるのかという検証です。
今度は何故か小節のカウントがあっていますw
一番最初の水のような音のせいでしょうか。1、2小節がEonC♯として解析されてしまいました。SEに振り回されていますね。
謎の分数コードがたくさん解析されてしまってミスが多いように見えますが、実はほとんどがメロディの音程を読み取ってしまっているという事が判明しました。
おそらくパッと曲を聴いた感じだと、バッキングとして鳴っているシンセの方が、メロディよりも低い音程を鳴らしているように聴こえると思います。
実際、楽譜に表示するとバッキングの方が低い音程なのですが、次の画像を見てください。
▼6小節バッキングの音高

▼6小節シンセメロの音高

Logic Pro内蔵EQでアナライザーにかけた結果、音量はそんなに大きくないですが、バッキングよりさらに下にメロディの一部が混在していました。
音色で解析結果が変わってしまう可能性があるという事ですね。
精度の検証結果
複雑なコード進行であればあるほど、精度がより甘くなっていく印象でした。
特にm7、7th以外の四和音は外れが多い印象です。
と言っても外れる時は大抵、似たような響きのコードが表示されていたので、その点を考えるとすごいアプリではないかと思います。
検証結果詳細
・解析できるコード進行は1拍毎であり、シンコペーションでコードが変わる場合は、次の拍の頭に解析結果が表示される。
・小さい音にも敏感に反応できる。(裏目に出る事がある。)
・第3音、メジャーコードかマイナーコードかの解析精度はかなり高い。
・早いコード進行には解析が追いつけない事がある。
・ベースの音(一番低い音程の音)の解析精度は高いが、分数コードには弱い。
・四和音のコード進行の場合、4音目の音が検出されることは少ない。
・メロディの音程に釣られてコード表記が間違う可能性は低い。
・音色次第で解析結果が変わってしまう事がある。
・ドラムを含めパーカッションの音程が解析結果に影響を与えていないことから、突発的な音は解析出来ない可能性が高い。
楽曲によって精度にムラがあるので、解析精度の良し悪しは人によって感じ方が大きく違ってくるのではないでしょうか。
ギターの弾き語り曲などのコードを知りたい人には心強い味方になるでしょうし、複雑なコード進行の曲を好む人にとっては合わないかもしれません。
「似たような響きのコードが表示されていても別にいいよー」って方にとっては大変重宝するアプリとなるでしょう。
逆に「俺はコードを完璧に知りしたいんだ!」って方は……
アプリダウンロード
まとめ
複雑な楽曲は少々不安ですが、このクオリティのアプリが無料でダウンロードできるのですから、試してみる価値は非常に高いと思います。
メロディーキャンセル機能はiPhoneの標準音楽アプリには搭載されていないので、歌の練習にだってモッテコイですし、僕はコード解析機能よりむしろこっちに感動しました。(馴染みが全く無かったのでw)
という事で、今回はコード解析精度を検証するという記事でした。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
ペーでした。おおきにっ!