当記事は、これからシンセサイザーの勉強をしようと思っている読者をターゲットに、初歩的な部分から解説する記事となっています。
今回は「LFO」と「エンベロープジェネレーター」のお話です。
VCO(オシレーター)・VCF(フィルター)・VCA(アンプ)について、
まだご理解されていない方は先にこちらの記事をお読みになることを推奨します。
また、各種ツマミやボタンの機能については今後掲載予定の
「実践編」にて紹介したいと思います。
音の流れを"邪魔すること"で音色を変える2つの機能
下の画像は音の流れと信号の方向を表したものです。
数字の1.2.3(VCO・VCF・VCA)は音が流れる順番で、
3のVCAを通った音が音色としてシンセサイザーから出てきます。
今回の記事で扱うのは下2つの機能、
LFOとエンベロープジェネレーターです。
二つに共通する特徴は以下の通り!
●音色に時間的な変化をつけることが可能
●VCO・VCF・VCAそれぞれに信号を送ることができる(シンセの性能によっては不可能)
特に理解して頂きたいのは、
上の音色に時間的な変化をつけることが可能という点です。
LFOはシンセの中でも特にとっつきにくい機能だと思いますが、
使いこなせなくてもカッコいい音は作れるので気楽に勉強するのがいいと思います。
LFO(ローフリケンシーオシレーター・Low Frequency Oscillator)
名前にオシレーターとありますが…つまり、ここも音を作る場所です。
しかし、ここで作られた音は聴こえません!!
!?!?!?!?
lowは英語で"低い"
frequencyは英語で"周波数" の意味ですが、
LFOとは人間の耳では聞こえないほどの低い音(音波)で『イタズラをする装置』です。
イタズラの対象となるのは基本的にVCO・ VCF・VCAの3つで、
VCOに音波を送った場合はピッチ(音高)が変化 <ビブラート>
VCFに音波を送った場合は明るさが変化 <ワウ>
VCAに音波を送った場合は音量が変化 <トレモロ>
以下イメージ図です。

極端な話、LFOをかけることで音を揺らすことができます。
またシンセによっては、
LFOの「強さ」「音波の種類」「時間差でLFOをかける」「イタズラの対象の変更」など、様々なことができます。
上手く扱えないと、変な音色や面白い音色になってしまいますが、
扱えるようになると音作りの幅がウンと広がり、凝った音・オリジナリティ溢れる音も作りやすくなります。
エンベロープジェネレーター(エンベロープ・EG)
一言で表すと時間的変化をつける場所なのですが、
LFOが「音を出している(鍵盤を押している)間は周期的に音が変化」するのに対して、
エンベロープは「音を出している(鍵盤を押している)時間が長かろうが短かろうが、1つの発音に対し非周期的に音が変化」します。
言葉を読んでもちんぷんかんぷんだと思いますが、
実際に触ってみるとかなり感覚的に操作できる部分です。
エンベロープもまたLFOと同じように対象を自分で選べるシンセが多いのですが、
もし選べないエンベロープに出くわした場合、それは高確率でVCA(アンプ)が対象となっています。
エンベロープの解説をする本やサイトを見たことがある方は、このような図を見たことがあるかもしれません。

エンベロープでは基本的にADSRの4種類の値を設定して音をコントロールします。
今回はVCA(アンプ)を対象として設定した場合に、それぞれの値がどのように変化するのかを説明します。
※VCAを対象として説明するのが一番分かりやすいので。
A Attack…音の立ち上がりの早さを決める値。数値が小さいと早く、大きいと遅いことを表す。例えば打楽器だと早めに設定し、弦楽器だと遅めに設定することが多い。
D Decay…Attackで到達した最大の音量から、Sustainレベルに移行するまでの時間を決める値。
最初は効果が分かりづらいかもしれませんが、対象がVCF(フィルター)になっている時はとても分かりやすいパラメーターです。
S Sustain…Decayの後の音量を決める値。鍵盤を長押ししていると、いずれここで設定した値の音量になる。ADSRの中で唯一、時間ではなく音量を設定するパラメーター。
R Release…鍵盤を離してから、どのくらい音の余韻を残すのかを決める値。この数値を極端な設定にすると機械的な音色に仕上がることが多い。
これらの構造がシンセのどこに組み込まれているのか。
例としてソフトシンセを幾つか紹介します。
赤枠内がVCO(オシレーター)
青枠内がVCF(フィルター)
緑枠内がVCA(アンプ)
茶色枠内がLFO
桃色枠内がエンベロープ
となっています。
▼windows・mac両方で使える超有名なフリーシンセ「Synth1」の場合。

LFOは2つ付いていてそれぞれに音波を設定でき、イタズラの対象も7種類から選択できます。
エンベロープは対象を自分で選ぶことはできませんが、VCA(アンプ)とVCF(フィルター)に付いています。FilterにはA・D・S・Rに加えamt(アマウント)というツマミが用意されていますが、これはエンベロープの掛かり具合を設定するものです。
「Synth1」のアマウントでは真ん中より右に回すとプラス・左に回すとマイナス(逆向き)に設定できるようになっています。
▼Native Instruments社の人気有料シンセ「MASSIVE」の場合。

これはデフォルトの画面。エンベロープとLFOが4つ付いていています。
それぞれ対象を自分で設定でき、複数に設定することも可能です。(例えばLFO1でオシレーター・フィルター・アンプ全てを制御する…とか)

上の画像はLFOを選択した場合。茶色枠が非常に見えにくいですが…
MASSIVEでは音波を二つ選び、それを組み合わせて新しい音波を作ることが可能です。(一つしか使わないことも可能)

上の画像はエンベロープを選択した場合。
ADSRに加えてDelayというものがあります。「鍵盤を押してからどのくらいの速度で信号を送るのか?」を設定できるツマミです。
▼DAWソフトLogic Pro X内蔵シンセ「Alchemy」の場合。
LFO・エンベロープを合わせて10個まで作成することができます。
上の画像はデフォルトの画面(エンベロープの画面が選択された状態がデフォルト)。
ADSRに加えてH(Hold)というものがあります。Attackと同じ信号量を持続することができるパラメーターです。

上の画像はLFOを選択した場合。音波の種類は60以上あります。
多ければ良いというものではありませんが、LFOやエンベロープを沢山設定できるシンセはワクワクしますね!やっぱりフリーシンセはどうしても少なくなってしまう傾向があり、音作りの幅は狭まってしまいます。
重要な余談
ここで少し裏話。
この『8割のシンセサイザーに通用する使い方講座 | 音作り入門編』は、当記事と冒頭で紹介した記事との2つの記事で完成する予定だったのですが、まだ6割のシンセサイザーにしか通用しそうにないため、もう一つ記事を書き足すことにしました。
シンセによりけりですが、中にはLFOとエンベロープの対象を自分で設定しなくてはいけないものがあります。これをしないと、LFOやエンベロープのツマミをどれだけ動かしても全く音が変わりません。
なので、次回はその部分について解説する記事を更新します。
因みに「Synth1」の場合LFOは電源を入れれば良いですし、エンベロープに関しては最初からVCF(フィルター)とVCA(アンプ)に接続されているので音は変わります。
※丸で囲んでいる部分がLFOの電源です。

まとめ
前回の記事(まだ読んでいない方はこちら)と今回の記事を理解できれば、多少複雑なシンセと出会ったとしても、検索せずに一人で攻略することが出来るようになるかと思います。
見た目や表記が違ったりするからややこしいだけで、「根本的な部分は同じだった」ということも少なくないと思います。
今回の記事はかなり難易度が高い話だったかもしれません。
僕も最初は理解できる気配が全くなくイライラして怒鳴りながら勉強してました「なんで、そんな音になるんじゃアホんだら〜ッ」て。
奇想天外な音が出来る毎日。たまに誰も真似できないような音になったりして……
最初は本当に難しいと思うので、音楽が嫌いにならない程度に頑張ってみてください!
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
ペーでした。おおきにっ!